今回のご依頼はコーヒーミルのハンドルの修理です。
とても思い出深い大切なコーヒーミルなのだそうですが、輸送途中のアクシデントで壊れてしまったそうです。

材質は鉄の鋳物(鋳鉄)ですが成分(種類)がわかりません。
内燃機関に使用されている鋳鉄は何度か挑戦していますが、うまく溶接できません。
成分の所為なのか、錆の所為なのか、熱がかかるからなのか・・・いまだに不明です。
Tig溶接でニッケルの含有量が多い棒を使っても溶接した両側にクラックが入って、そこを埋めようと頑張るとその脇にクラックが入ってしまうという恐ろしいことになります。(アーク棒の方がいいのかもしれません)
最終的には銀や真鍮のロウ付けということになるのですが、まったく不本意なのです。
でも、このハンドルはなんとなく出来そうな気がして修理を承りました。(ほぼ感です)

バラバラになっていますけど、部品は全部そろっていました。
これが一つでも無くなっていたらとても大変です。
鋳物は金属ですが「伸び」がほとんど無いために、衝撃が加わると割れてしまいます。
瞬間的に破断するために、くっついていた断面同士はわかりやすいです。

断面を合わせながら番号を付けて、微妙に合わなくなっている部分を強度を持たせるための開先も含めて修正(すり合わせ)していきます。

仮付けをして全体のバランスを見ます。
おかしな部分が見つかればすぐ外せるように(三回外した)小さく付けますが、簡単に外れると合わせている最中に外れてしまい(二回外れた)やり直しになるので、そこの加減がポイントです。

本付け完了!
一か所ずつ集中的に溶接すると歪や割れが発生するので、数回に分けて全体を溶接しました。
いい感じで溶接が出来るとホッとします
開先を取っていますので強い衝撃が掛からなければ特に問題はありません。

溶接部の仕上げ作業。
デザイン的に仕上げにくい形状でしたので色んな道具を使い、進行してきた「大人の目」のお陰で防護ゴーグルがハンドルにくっつきそうになりながら仕上げていきました。

塗装作業。
まさか削ったままでお渡しも出来ないので、塗装をします。
文字の部分や外周の傷はあえて残すためにマスキング。
この作業は簡単です。
問題は色です。
同じ色はもちろん持っていないので、調合する感じで塗装しました。
結局三層塗りになっています。

組み付けて完成。
見た目には違和感なく出来上がりました。(でも、回すと振れています)
修理品はとても緊張しますが、上手に出来上がるととても嬉しいです。
何でも直せるわけではありませんが、当社の技術で直せるもの(小さいものや薄いものは苦手なのです)はお役に立てればと思います。