形あるものは最終的に全て破壊、破損、変形、劣化の道をたどります。
何故ならそれが「自然」なことだからです。
しかし、そうもいっていられないことも有ります。
私の知識や技術でお手伝い出来るのが「溶接」。
でも、何もかもがそうできるわけではありません。
「出来る」と思っても「出来なかった」ことも多いのです。


まずはしっかりと部品と向き合います。
そして磁石がつくのか確かめたり、破断面を観察します。
しかしその時点では溶接できるのかは不明です。
離れ離れになった部品を断面どうし合わせてみて、Tigのアークを飛ばしてみて、やっとここで「出来る」のか「出来ない」のかが判明するのです。
緊張の瞬間です。
「出来る」と思った時の安堵感に対して「出来ない」と分かった時の絶望感はかなり打ちひしがれます。

今回の部品は「出来る」でした。
しかし、そうだとしても「強度」はいつも気にしなければいけません。
「くっついた」だけではダメなのです。
「しっかりとくっついた」状態にすることに神経を使います。

ですので、これは見た目に「くっついている」というわけではありません。
しっかりと「開先」を取って中まで溶接しています。
鋳物の溶接は母材の希釈を最小限にして溶接します。
そして徐冷。
うちでは「バーミキュライト」の中に入れて急冷を防ぎます。
小さな部品でも溶接後1時間は入れておきます。
部品によっては「ハンマリング」もします。
なぜなら怖いから。
「溶接した場所がまた外れた」
これほど恐ろしい言葉はありません。